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5日と20日は歌詞と遊ぼう。

毎月5日と20日に、J-POPやボカロ曲などの歌詞を読んだり、統計したりしています。twitterは@hacosato。

ZONE『secret base〜君がくれたもの〜』

-思い出の秘密基地-
こんにちは。
secret base?君がくれたもの?
今回はZONE『secret base〜君がくれたもの〜』を読んでみたいと思います。

君と夏の終わり 将来の夢
大きな希望 忘れない
10年後の8月 また出会えるのを 信じて

っていうこの曲、明らかに夏の歌です。
なのにどうしていまこの曲を取り上げようと思ったのかというと、それはね。
…あ、まあ、やめにしましょうか。野暮だし。いまは夏じゃないけれど、晩夏を舞台にしたこの曲の世界にひたってみることにしましょう。あと半年も先のことに思いを馳せつつ。

歌詞はこちら→http://www.uta-net.com/user/phplib/view_0.php?ID=13699
構成はこちら→サビ1-サビ2-A-B-C-サビ-サビ-B-C-サビ-ブリッジ-サビ-サビ-サビ-サビ2

思い出のハコ

ところで、「secret base」ってナニ?
私のMacに入っている『プログレッシブ英和中辞典』によると、「base」には、


10 (軍の)基地, 作戦[補給]基地;ベースキャンプ
って意味があります。「secret」にはもちろん「秘密」って意味がありますから、「secret base」はきっと秘密基地のことなんでしょう。
とすればもちろん、歌詞の中から「秘密基地」を探したくなります。探すと何か所か出てきますが、最初に出てくるのはこれ。

嬉しくって 楽しくって
冒険も いろいろしたね
二人の 秘密の 基地の中

最初のCメロにあたる部分。「嬉しくって」の「っ」が、うれしい感じを上手に表していてステキです。でも私はここを見て、変だなぁと思いました。ふつう、基地の「中」では冒険できないじゃん。
秘密基地ってつくったことはありますか? 私が持っていた基地は木の陰にあって、そこで私は友だちとどんぐりを集めたり、木の棒を集めたりしたものでした。懐かしー☆ でも、その秘密基地はひとが3人入ればもういっぱい。基地の「中」で冒険ができるほどは広くないのです。ふつう、秘密基地ってそんなものだと思います。中がぜんぶ知れていて、冒険の余地なんかなくて、でも安心できるからこその基地なのです。

悲しくって 寂しくって
喧嘩も いろいろしたね
二人の 秘密の 基地の中

2番のCメロにも「基地」は出てきます。メロディが同じなので、歌詞も同じ構成。ただ、ポジティブだった部分がきれいに反転してネガティブになっているのが、テクですね♪
この連では基地の中で「喧嘩」してますけど、喧嘩なら基地の中でもあり得そうな感じ。こっちは特に問題ないですねぇ。基地の中で冒険だなんてこと、私が気にしすぎなだけなんでしょうか。
さて、

突然の 転校で どうしようもなく
手紙 書くよ 電話もするよ
忘れないでね 僕のことを
いつまでも 二人の 基地の中

ブリッジを引用しました。ここでもふたりは「基地の中」にいます。これだけ見たら意味が通るように思えますが、この読みだと大事なことを落としてしまっているのです。
そもそもふたりの出会いはどこにあったんでしたっけ? 最初のAメロに書いてあります。

出会いは ふっとした 瞬間 帰り道の交差点で
声をかけてくれたね「一緒に帰ろう」

ここに出てくるように、「帰り道の交差点」がふたりの出会いとして、語り落とせない場所のはず。
なのに、「いつまでも 二人の 基地の中」だと、そんな大事なふたりの出発点を見落としてしまいそうになります。やっぱりここもちょっと変だ…。
どうしてこんなに筋が通らないのでしょう? もしかして、ここに出てくる「基地」は、文字通りの秘密基地なんかじゃない? 歌詞がおかしいんじゃなくて、私の読み方を変えるとしたらどうなるかなぁ。「secret base」ってもっと、ふたりの出会ってから別れるまでを全て包括できるような…、
記憶のタイムカプセルみたいなものだったらどうでしょう?ふたりの思い出をまるごとしまっておけるアルバムのような、そういうイメージです。
こうだとしたら話はすっきりです。冒険も、喧嘩も、ふたりの思い出をしまったタイムカプセルの中でのできごとだっていうことなのかも。

時のフラグメント

この歌詞は最初、サビの部分から始まりますが、それが過ぎると、

出会いは ふっとした 瞬間 帰り道の交差点で
声をかけてくれたね「一緒に帰ろう」

というAメロが始まります。
一方、歌詞の最後はというと、

君が最後まで 心から
「ありがとう」 叫んでたこと 知ってたよ
涙をこらえて 笑顔でさようなら
せつないよね 最高の思い出を…

最高の思い出を…

という部分で終わります。つまり、出会ってから別れるまでをきれいに収めた歌詞に構成になっています。
なのですが、その間の時制はものすごくばらばらです。
1番のBメロには、こんな部分があります。

あぁ 花火が夜空 きれいに咲いて ちょっとセツナク
あぁ 風が時間とともに 流れる

花火って、咲いたそばから流れていってしまう、あらゆる花の中で指折りに短い命の花です。そしてその早回しの世界が、否が応でも流れる時間を意識させちゃうんですよね。フジファブリック『若者のすべて』に出てくるみたいに。
この歌詞でもそんな風に、花火を見ながらちょっとしんみりしています。そして「風が時間とともに 流れる」と意識しているのは現在形です。
今度は先ほども引用したサビのフレーズ、

君が最後まで 心から
「ありがとう」 叫んでたこと 知ってたよ
涙をこらえて 笑顔でさようなら
せつないよね 最高の思い出を…

をもう一度 見てみます。君が叫んでたことを知ってたよだなんて、わざわざ口にするってことはきっと、それが知りづらいことだからです。ふたりは電車とかバスとかみたいに、ガラス越しのお別れを経験したのかもしれません。
経験し“た”…?
ここの部分、動詞は過去形です。
さっきの花火は現在形でしたね。でもお別れのシーンは過去形です。なんでなんで!? この曲、時制が混乱しています。始まりと終わりだけきれいになっているように見せかけておいて、中身はすごくばらばらになってしまっています。
ねえこのばらばらの状況、「涙をこらえて 笑顔でさようなら」に似ていませんか?外見だけ精一杯の努力で取り繕って、でも中身はもう、気持ちをしゃんとできない状態。「涙をこらえて」るんだから、ほんとうは泣きたい気持ちなんですよね。でもお別れを前にして、できるだけそれをこらえて、ちゃんと向き合って別れようとしています。本当はいろんなエピソードがばらばらに思い出されては消えていくけれど、せめて歌詞の最初と最後ぐらいは整えておきたい気持ちと呼応して見えてきます。
この曲、ZONEの4人が代わる代わる歌うところにも特徴があるなぁって感じます。あるフレーズから歌い手が変わると、そこからまるで違うエピソードに切り替わるみたい。そんな仕掛けもぜんぶ、時をフラグメントにしてくれます。小さな思い出の集まりはまるで走馬灯のようでもありますね。

たったひとつのアンカー

何度も同じ部分を繰り返して引用したくなるのは、ほかでもなくその部分が、やっぱりぐっと来るからです。ブリッジを引用しますね。

突然の 転校で どうしようもなく
手紙 書くよ 電話もするよ
忘れないでね 僕のことを
いつまでも 二人の 基地の中

2行目の部分のたたみかけるようなメロディと切ない歌詞とのコラボレーションがステキすぎー♪
歌い手の気持ちはこんなふうに基地の中へと向いているわけですが、一方で「手紙 書くよ 電話もするよ」とも話しています。手紙も電話も、基地の中から基地の外へと向かう通信手段です。「君」との別れを前にして、歌い手は基地の中だけを向いているわけではありません。外ばかりを向いているわけでも、もちろんないんですが。
こんなふうに焦点の定まらない歌詞の世界の中で、たったひとつだけ、しっかりといかりを下ろしてくれている個所があります。それは「基地」でもなく、「夏」でもなく、10年後の8月です。10年後の8月だけが、歌い手の中でちゃんと居場所をつないでくれています。
「君」と、なにか約束をしたのかもしれません。そうではなくて、単に歌い手が心にそう決めているだけかもしれません。それは歌詞の中には書いてないし、推理できるようなヒントも埋め込まれていないように見えます。それでもその「10年後の8月」はどうしても気持ちが不安定になってしまう歌い手の中に、ちゃんといかりを下ろしてくれています。「君」とも別れてしまうし、「夏」も終わってしまうし、「基地」の中ではきっとこれからはひとりぼっちで、歌い手が信じられるのはそんな遠い未来への期待だけなのです。
この曲の最後は、2分近いアウトロが占めています。なんかちょっといびつなシンセサイザーの響きが、延々と続きます。


私が聴いているのはアルバム「Z」のバージョンなので、YouTubeに載っているとおぼしきシングルバージョンはちょっと違うみたいです。Wikipediaによると、「シングルヴァージョンでは演奏が途中でカットされているが、アルバム「Z」では演奏が最後まで収録されている。」とありますので、ここに違いが出ているのだと思います。この言い方だと、本来の演奏はアルバムバージョンだという響きを感じますし、私自身の耳になじみがあるのもアルバムバージョンのほうなので、ひとまずアルバムのほうで話を進めてみようかと思います。
でもこのシンセサイザーのメロディ、実はずーっと前から流れていたのでした。ボーカルにまぎれて聴こえづらくなっていただけです。
ずっと曲を構成していた、ボーカルという要素がなくなって、そしてずっといっしょに流れていた別のメロディがはからずもよく見えるようになって。まるで、歌詞の中の「僕」と「君」の関係のようです。ずっとふたりでつくっていた曲は、途中で片方が欠け落ちてしまって、もう一方だけが意図せず残ってしまって。そういう関係が、この歌詞の中身ともシンクロして読めるような気がするのは深読みのしすぎでしょうか。
そんなことないと思うんだけどなぁ。

つながリンク

前回 取り上げたのは、土岐麻子『Gift〜あなたはマドンナ〜』でした。前回も今回も、タイトルが英語で、さらに日本語のサブタイトルが付いているっていう共通点があります。それについて、ちょっと考えてみたいことがあります。
普通、口頭で曲を話すときには、サブタイトルは付けないことが多いように思います。「ジュジュのハローアゲイン」こんな風に言いますよね? だとすれば、前回の曲も「土岐麻子のギフト」になるし、この曲は「ゾーンのシークレットベース」になるでしょう。なりますよね。じゃあサブタイトル意味ないじゃん!
…なくはないですね(汗)。
『Gift〜あなたはマドンナ〜』は、曲が事前にCMでたくさん露出していました。だから曲は知らなくても「あなたって不思議だわ あなたっていくつなの」っていうフレーズに、覚えのある人は多かったはずなのです。TOWER RECORDで、あるいはiTunes Storeで、そういう人たちにぴんと来させるような仕掛けはきっとマーケティング的には必要で、だから「あなたはマドンナ」っていう、CMにもちゃんと出てくる部分がサブタイトルに必要だったんじゃないかな、と私は勝手に思っています。
でもそれがタイトルに出てこないのはきっと、あの歌詞の中で一番いいたいことが、それではなかったからなのでしょう。一番いいたいことはもちろん、ギフトのところ。

悲しみも 喜びも 傷ついた過去さえも
シュペリエルな シュペリエルな
あなたへのギフト

っていう応援歌だから、それをタイトルから下ろすわけには、ちょっといかなかったんでしょうね。
一方でZONE『secret base〜君がくれたもの〜』はどうでしょう? 「君がくれたもの」は数あれど、そのうちのひとつが「secret base」、つまり基地であることは多分もう疑いのないところでしょう。なら、「secret base」=「君がくれたもの」となります。
でも、「secret base」だけだと冒頭に私も調べたように、意味がちょっとわかりづらいんですよね。baseを基地って意味では普段あんまり使いません。だから日本語でサブタイトルが付いたんじゃないかな、と私は思います。
それに、ZONEがこの曲を出したとき、メンバーは13歳とかだったみたい。私がそれくらいの歳だったとき、自分の中では英語のタイトルの曲ってそれだけでキャラが立ってなかったのを思い出します。そういうとき、日本語っていうアンカー(いかり、って意味で使ってます)があれば、それだけでその曲は、自分の中で確固たる位置を占めたりしてたのでした。そういうのも、あるかも。
だからどちらも、日本語のサブタイトルが、英語のタイトルを意味的に補足しているのかな?って思ったのでした。考えてみたら、逆のバージョンってあんまりないですね。日本語のタイトルに英語のサブタイトル。自分のiTunesから探してみようっと。



晩夏の曲っていいですね。春は出会いの時期であるのと同時にお別れの時期でもあります。そのお別れ感がシンクロして、晩夏の曲って春にも合うよなぁって私はちょっと思っています。
とはいえ、やっぱり春には春の曲でしょう♪ 立春も過ぎたし、あったかくなってきてなんだかうれしいし、これからは春モード全開の選曲でいこうと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします!
Z

Z

E ~Complete A side Singles~ (通常盤)

E ~Complete A side Singles~ (通常盤)

secret base ~君がくれたもの~

secret base ~君がくれたもの~

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