5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

ポケットビスケッツ『Red Angel』

-赤い天使の正体-
こんにちは!
JOYSOUNDうたスキのアカウントをとって、ログインしてからカラオケに行くと、歌った曲が残るんだって。楽しそう♪と思ってやってみたら、なんと、うた年齢ってのが表示されてるっ。どれくらいの年代のヒトが歌う曲を私が歌ったかの平均をとったみたい。
見てみた。24歳だって(!)。あー、調子に乗ってTHE BLUE HEARTSを2曲も(あれこれです)歌ったのが響いてるんだわ〜、とかいろいろと楽しかったです☆ またやりたい。
Colorful
今回 取り上げるのはポケットビスケッツRed Angel』です。私はさっそく前回の予言を裏切ってしまうぜ! …ってぉぃ。
ところでこの曲、今回 改めてちゃんと聴いてみて、私は失礼ながらちょっと驚いてしまいました。だって、失礼ながら、こんなにいい曲だったっけ?歌詞も予想していたのよりもずっと読み応えがあって、ただの企画モノだと思っていた私が浅はかなだけだったこと、図らずもあらわになってしまったのです。hacosato、だめなコ。
だってこの曲、いきなり

この星のウィルスも少し壊れ始めて

なんて描写から始まるんですよ? なになに? 新型インフルエンザ? SARS口蹄疫? なんて思っちゃうじゃないですかっ。でもよーく思い返してみるのです。この曲のリリースは1997年。今から13年も前なのです。予言者みたいすごい。あと、コレ歌ったらたぶん私のうた年齢がまた上がっちゃう(汗)。
歌詞はこちら→http://www.uta-net.com/user/phplib/view_0.php?ID=9556
構成はこちら→A-A-B-サビ-A-A-B-サビ-(間奏)-'サビ-サビ-サビ

都市のおもちゃ箱

この曲、なんだかすごくたくさんの要素から構成されています。前回、THE BLUE HEARTS『情熱の薔薇』を取り上げたときに、歌詞の中から名詞だけを取り出してみましたよね。そして、手触りのない名詞から手触りのある名詞へと進む大きな流れがあることに気づいたんでした。
でも今回は、手触りのある名詞ばっかり。しかもそのどれもがかなり前へと主張してくるものばっかりです。


ウィルス、時計の針、赤い風、パステルの夢、正義の行進、フェイク、天使の羽根、砂の街…
っていうように。どれをとってもその単語を中心に1曲書けちゃうような、そういう強い言葉がたくさん集まっています。おもちゃ箱みたい。
でも、これって単に売れ線な曲を作るためにポップな名詞を手当たり次第に持ってきたのではないと思います。だって、なんだか共通点があるもん。この曲、全体に近未来的で、かつ毒々しいイメージが溢れています。
もちろん冒頭に挙げたウィルスもそうです。サビの「赤い風」なんかもそうですね。私はこれを見て、黄砂を連想しました。中国の奥地で砂漠化が進んで、その環境破壊の影響で日本の空が黄色く染まる、みたいなストーリーに乗ってやってくるあの黄砂です。でもこの歌詞のほうが黄砂より上手です。黄色よりも赤いほうが毒々しいもん。
2番2つめのAメロ「顔のない 正義の行進」も同じイメージ。だいたい行進って都会でしかしないことですよね。私にとっては行進ってなんとなく戦争の足音のイメージがあります。「顔のない」ってあたりからは強すぎるプライバシー意識を連想することもできますし、ネットでのコミュニティのことを連想することもできますね。どっちにしても近未来って感じ。そしてちょっとネガティブ。
ところで、

無機質な 恋愛グラフも 上がり始める

全身で 恋をする 癖を許して

2人を邪魔するもの すべて消して ゆくんだから

なんて飛び飛びで引用してみましたが、このへんだけでももうわかります。この曲は明らかにラブソングですね♪ でもこの曲で歌われているのはラブだけじゃありません。そのラブの舞台になっている都市という背景がきっちり描きこまれていて、しかもそれがちゃんとラブにつながってきています。プロットもさることながら、情景描写も素晴らしい小説(とか映画とか)ってあるじゃない? そういう雰囲気を感じますよね。

強さと強がり

さっきの節で、この曲は都市という背景をきっちり描きこんだラブソングだっていうことを確認しました。いろんな都市的な単語が出てきながらも、なぁんだラブソングか、結局はJ-POPの王道テーマに落ち着くのね、なんて思っちゃったヒトがいますか? それ、早とちりです。この曲、明らかにただのラブソングじゃないんだから。
例えばおもしろいのは、まず、一人称が歌詞に登場してこない、ということ。口調から考えて女子→男子へのラブソングに見えますが、「私」とか「あたし」とか、そういうコトバはまったく出てきません。
でも、

2人を邪魔するもの すべて消してゆくんだから

あなたを失くす以外 なにも恐くないのよ

なんて表現に注目しましょう。歌い手は自分のことにぜんぜん触れないのに、歌い手は「あなた」へのすごく強い思いをストレートにぶつけてきちゃうのです。
一方で、「あなた」から歌い手への思いについては言及が一切ありません。あなたへの思いのある曲なら、その点に対して不安な気持ちを織りこんだりしたいですよねぇ(例えば西野カナ『if』みたいに)。
この曲にある感情は「あなた」へのストレートな思い、それだけです。ラブソングは「あれは初恋だった♪」と過去を振り返るかたちにしても、「これは運命だわ♪」と現在形で描くにしても、ある程度の客観視が間に入ってしまうと思うのです。この曲の潔いところは、そういう要素をばっさり排除して、主観的な気持ちだけで最後まで歌いきってしまうところにあります。すごく強いのです。そして、強いだけ。
ところで、

赤い風が吹く街 どこまでも駆けてゆけ
2人を邪魔するもの すべて消してゆくんだから

っていうのがサビの歌詞です。「2人を邪魔するもの」っていうのは「赤い風が吹く街」ですよね。歌い手はこんなに強い口調で「街」を敵に回しているわけです。
ですが、歌い手の口調、強がりがむき出し。だって、「ゆくんだから」なんて表現、意地になっていたり背伸びしていたり強がっていたり、そういうときにしか使わない表現じゃない?
この曲の最後は、

なにも恐く なんかないから

と結びます。これも強がりの定型句。ってことはもしかして、本当はなにかが恐いのかも。
そんな風に見てみると、2連の2行め、

吹くはずのない色の風にちょっとだけあせる

や、2番のAメロ2行め、

パステルで描いてた夢はリセットできない

なんかも図星です☆ やっぱりどこかに背伸びがありそうですね。
こういう部分が、Aメロの途中という、目だたない部分に置かれていることも注目。基本は強がりで構成されている歌詞です。そこに、強がりきれてさえいない部分がよく見るとちょっと残っているようになっているのが巧みです。

Red Angel」の正体

この曲のタイトルは『Red Angel』。なのに歌詞を見てみても、その単語は直接には出てきません。RedとAngelに分けて、ちょっと推理してみましょう。
まずは「Red」から。サビに

赤い風が吹く街 どこまでも駆けてゆけ
2人を邪魔するもの すべて消してゆくんだから

って部分がありますね。「赤い風」は「2人を邪魔するもの」っていう立ち位置みたい。
1番のAメロには、

吹くはずのない色の風にちょっとだけあせる

って部分がありますから、たぶんこの「赤い風」は歌い手を焦らせる存在でもあるかな?
「Red」はやめて、今度は「Angel」のほうを。
2番のサビに、

あなたと一緒ならば 天使の羽根 きっとみつかる

って部分があり、ブリッジの部分には

砂の街 抜け出して 天使の羽根 みつけてみせる

って部分があります。この歌詞に出てくる都市の描写はネガティブなものが多いなぁ、ってこの文章の割と冒頭のほうで気づいたところですが、ここに出てくる「天使の羽根」は数少ない、明らかにポジティブな言葉です。この歌詞の中では、「あなた」を守りながら「天使の羽根」を見つけることに価値があるみたい。
「赤」は忌み嫌われるものであり、「天使」は求めるべき存在です。なにそれ? じゃあ「赤い天使」ってなんだろう? 嫌いだけど、「あなた」といっしょにいるためにはどうしても見つけなきゃいけない存在。歌い手とはどういう関係だったら、筋が通るかなぁ?
ということで考えたのですが、Red Angel」が歌い手にとっての恋のライバル、だったらどう?
(こっからはたぶんに妄想が入ります)歌い手は「天使」を探していますから、歌い手はライバルの居所を探しているところです。「天使」を見つけたら、こんなことを言うのです。
「あなたとあたしで、どちらが○○くんの彼女にふさわしいか、決めましょうよ!」
って。なんかわかりませんが、私のイメージ的に千秋はこういうセリフ似合います。
だとすると、ほかの部分もちぐはぐがすっきりしてきます。「吹くはずのない風」は、
「あなたがあたし以外の女子に振り向くわけないのに…?」
という不安な気持ちと符合します。サビの部分はつまり、
「あたしがあなたのカノジョなんだからーっ」
というメッセージになるでしょうし、最後の部分は
「でも、もしあなたが『天使』のほうを選んだとしたら…」
という一抹の不安を表現することになっちゃいますね。
そんな風に気持ちを揺らしているのは、歌い手自身でもないし、「あなた」でもありません。とりもなおさず「Red Angel」です。だからこそ、このコトバが曲のタイトルに据えられたのです。

まとめ

さて、前回はTHE BLUE HEARTS『情熱の薔薇』を取り上げました。今回の曲との共通点は、ずばり「赤」です。
『情熱の薔薇』では

情熱の真っ赤な薔薇を胸に 咲かせよう
花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥の方

っていう部分が最後の最後に登場しました。
それまで、歌詞の世界は手応えのない言葉が続いてました。

永遠なのか本当か 時の流れは続くのか

という部分が冒頭に出てくるところからもわかるように、最初のうちは抽象的な問いの迷路に迷い込んでしまっているみたいなのでした。
それが、最後の最後に出てくる「情熱の真っ赤な薔薇」によって、急に世界に色がついたように生気が注ぎ込まれます。この曲の「赤」はそんなエネルギーの色だし、血の色だし、生きている色です。
翻って今回の『Red Angel』。

赤い風が吹く街 どこまでも駆けてゆけ
2人を邪魔するもの すべて消してゆくんだから

とサビにあるように、この曲では赤はちょっと毒々しいイメージ。そしてタイトルにもある「赤い天使」は、もしかしたら歌い手の恋のライバルかもしれない感じ。この曲の中では、赤は恋の色であり、同時にもっと毒々しい、憎むべきイメージを内包している感じです。



…っと。久々に、きれいな解釈ができたような感じ。歌詞にはまったく盛り込まれていないようなサイドストーリーを立てたら歌詞の世界が急にクリアに見えてきた、なんて感じの経験がいっつもできたら気持ちがいいんだけどなぁ。実際にはそんなにカンタンじゃないです。
それにしても読み応えのある楽しい歌詞でした。惜しむらくは…あまりにも取り上げるタイミングがおかしい、ってコトだなぁ。今このタイミングでこの歌詞が気になるヒトが、世の中にそんなにいっぱいいるとは思えない(汗)。
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THANKS

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Red Angel

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