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5日と20日は歌詞と遊ぼう。

毎月5日と20日に、J-POPやボカロ曲などの歌詞を読んだり、統計したりしています。twitterは@hacosato。

Superfly『やさしい気持ちで』

-街中を包みこむメッセージ-
こんにちは。関係ない曲を聴きながらこの記事を書くのってすごく難しいということに今さら気づきました…。今からiTunesをOFFにしよっと。
恋する瞳は美しい/やさしい気持ちで
さて。改めましてこんにちは。今回はSuperfly『やさしい気持ちで』を取り上げます。フジテレビ系の朝の情報番組「めざましテレビ」のテーマソングでしたから、それでご記憶の方も多いはず。歌詞はというと、

あなたがいて、わたしになる
幸せにはきっと、ひとりきりじゃたどり着けない

1番のサビはこんな始まりです。テレビでもこの部分が一番 露出が大きかった印象です。ここだけ聴くならさわやかなラブソング。「幸せにはきっと、ひとりきりじゃたどり着けない」ってことはつまり、ふたりでいるなら幸せにもたどり着けるよ、ってことの裏返しなのでしょう。
なあんて。さらりと聴くならそんな風にも思えますが、よくよく読んでみるとこれは「わたし」と「あなた」だけの閉じた世界のラブソングじゃないことがだんだん分かってきます。ただのラブソングじゃない、もっと普遍的な愛の気持ちに包まれた世界観に裏打ちされているみたい。少し進んできたらきっと分かってくると思いますよ。今回はそんな『やさしい気持ちで』を取り上げてみたいと思います。
歌詞はこちら→http://www.uta-net.com/user/phplib/view_0.php?ID=81944
構成はこちら→A-A-B-サビ-A-A-B-サビ-アウトロ

わたしを救ってくれるのはだれ

顔も知らない、名前さえも
知らない人がわたしを待っている

この曲の最初です。え、いきなり疑問。この人ってだれなのよ。
「顔も知らない、名前さえも/知らない人」っていったら、実は文法的に考えられることはふたつあります。

  • (わたしの)顔も名前も知らない人(=向こうがわたしのことを知らない)
  • (わたしが)顔も名前も知らない人(=わたしが向こうのことを知らない)

どっちでも解釈できる文章ですね。
つじあやの『風になる』のときにもそうでしたが、どっちにも解釈できるような表現があったときには、どっちに解釈しても問題がないことが多いんじゃないかと、私は思っています。つまりこの場合には、お互いに相手のことを知らない、と解釈できそう。とにかく、知らない人がわたしを待っている、って歌っています。
その割にはその人について、この曲の中では手がかりが少なすぎるのです。続く2連ではその人がいる場所について歌っていますが、

どこか遠くで、隣の駅で
生まれたての青空の下で

こんな調子です。「どこか遠く」と「隣の駅」じゃ距離感がまるきり違います。「生まれたての青空の下」じゃ、場所について語っている印象すらあまりないような。それってどこなのだぜ? なにを描いているのか、一瞬 分からなくなります。
どんなことが起きているのかというと、たぶんわたしを待っている人は、あちこちにたくさんいるってことだと思います。
では、「わたしを待っている」理由はなんでしょうか。いくら知らない人だからって、ストーカー的な動機じゃありません。
1番のサビで歌い手は、

あなたがいて、わたしになる
幸せにはきっと、ひとりきりじゃたどり着けない

って歌います。ああそうか。Aメロに出てきた「知らない人」は、わたしを助けてくれる存在なわけです。わたしをわたしにしてくれるということはつまり、わたしのアイデンティティを約束してくれる存在ということですからね(アイデンティティについては、中川あゆみ『 事実 〜12歳で私が決めたコト〜』をどうぞ)。「知らない人」は、わたしを助けるため、わたしのことを待ってくれているみたいです。
ここにきて急に登場する「あなた」が、恋人だったりする可能性はあまりないかなと思います。だって変だもん恋人の話なんてしてなかったし。ここまでの文脈を生かすなら、この「あなた」は1連に出てきた「知らない人」のことなのでしょう。だからこの曲は、ラブソングじゃないのです。

単にわたしが救われるだけなのではなくて、

サビが終わると2番です。2番に入ると、「人」って表現が急に増えることに気づかされます。

いつでも人を好きでいたいんだ

心はいつも/人と人が育てあうものさ

1番に出てくる「人」とは意味が違いますよ。2番に出てくるほうの「人」は、1番だったら「わたし」とか「あなた」とかって表現になっていそうな部分です。2番ではそれが、代名詞として「人」になりました。抽象度が少し上がったわけです。1番よりも広い視野でものごとを捉えるようになっているってことに要注目です! わたしとあなたとで心を育てあっているんだけれど、心を育てあっているのはわたしとあなただけじゃないよ、人はだれでもそうなんだよ、そういうメッセージなのです。
ついでにもうひとつ。“お互いに”って意味の言葉が2番で急増していることに私は気づいちゃいましたよ! 「すれ違う」「育てあう」「暖め合おう」というように。これまでは一方通行だった心の方向が、いつの間にやら片側一車線に進化しているのにびっくり。
この曲、単純にあなたから救ってもらうだけの曲ではないのです。こちらから救えるようになっていくのです。だんだん手応えがやってきましたか?
分かりやすいところで比較してみましょう。1番と2番のそれぞれのサビ、4行めだけ取り出してみます。1番は、

輝いて生きていこう

でした。
2番は、

輝きを送りたい

です。
1番の時点では、輝きはいただきものでした。2番では輝きは差し上げるものに変わっています。もらうばかりだった歌い手、2番になると送ることだってできるようになります。さっき私が「一方通行だった心の方向が、いつの間にやら片側一車線に進化している」って言ったのはこういう意味です。“わたしから見たあなた”だけでなくて“あなたから見たわたし”も視界に入ってきているのです。しかも、「あなた」はたくさんいるみたいでしたね。図を描くならこんな感じになるでしょう。

きれいな図を描くのって難しいなぁ…υ

単に私とあなたのやり取りだけではなくて

ここまで1番、2番と順に追っていっています。もうあとアウトロしか残ってないんですけど、このアウトロがまた、視点をさらに1段階上へと押し上げてくれます。この曲ほんとにすごいんですよー。

街中が、やさしい気持ちで
今日の日を、やさしい気持ちで

アウトロはたったの2行でこんな感じです。「街中が、やさしい気持ちで」。ここまでの流れを踏まえると、この表現はすごいんですって。
おさらいしましょう。1番では主人公は輝きなどをもらってばかりでした。そしてその場所に、「やさしい気持ち」は生まれています。が、それは自分の心の中だけに生まれるだけです。
それが2番になったら輝きをプレゼントすることだってできるようになるのでした。「やさしい気持ち」のやり取りは、相互作用へと進化します。
そしてアウトロ。「やさしい気持ち」は、街中に満ちあふれるようになります。わたしとだれかとのやり取りだけではなくて、だれかとだれかのやり取りが現れたのです。一人称と二人称しかなかった世界に、三人称が登場したってことなのです。もしよければさっきの図に、アウトロ部分も反映させたイメージを考えてみてくださいね。私がさんざんすごいすごいって言ってたのはここなのです。
え、すごくないですか? じゃもう1行。
最後の行は「今日の日を、やさしい気持ちで」。最後の最後にタイトルのフレーズを入れるのを忘れないあたりがニクいわけですが、それにしても「今日の日を」って!
思い出しましょう。この曲は「めざましテレビ」のテーマソングでした。オファーがあってから曲を書いたのか、曲があってからオファーが来たのか、私にはそのあたり分からないばかりか見当もつきませんが、そんなことはもうどうでもいいのです。「今日の日を、やさしい気持ちで」だなんてこの表現、「めざましテレビ」にぴったりじゃないですかまったくもう。
歌い手はやさしい気持ちになるやり取りをうまく軌道に乗せることができて、「街中がやさしい気持ち」になるビジョンを描いています。そして毎朝「今日の日を、やさしい気持ちで」ってフレーズがテレビの電波に乗って日本中を巡ることをもイメージにしているはずです。これはメッセージソングです。だれかがあなたを「やさしい気持ち」にするように、あなたもだれかを「やさしい気持ち」にすることができるよ、というメッセージがこの曲にはこもっています。そしてみんながそうすれば、いつか街中がやさしい気持ちになるよ、と。Superflyはさりげない顔して、毎朝そういうメッセージを私たちに吹き込むのです。そして私たちはそれを聴いて毎朝 通学したり通勤したりしていたのです。毎朝、日本中にメッセージを届けることができたとしたら、どんな内容がいいだろう。その答えがここだったわけなんですね。
しかもそれは、そんなにハードルが高いことじゃないって、彼女は歌っています。「やさしい気持ち」が最初に出てきた部分を引用してみると、

もう一度、やさしい気持ちで

ほら。やさしい気持ちは初めての感情じゃなくて、すでにあなたが知っているものだよ。だから難しいことじゃないんだって。「もう一度」はそういうメッセージを連れてきていたんです。

まとめ

前回は中川あゆみ『 事実 〜12歳で私が決めたコト〜』を取り上げました。前回の曲と今回の曲との共通点は、“幸せ”です。そんなもの、すごくありふれたテーマのような気もしますが、どちらも幸せに注目するならすごく噛みごたえのある歌詞です。前回の文章を書き終えて、新しく取り上げる曲を考えていたとき、私は『やさしい気持ちで』をまっさきに思い出しました。そしてこれしかないじゃんっ!って思ったのです。
さて。中川あゆみ『 事実 〜12歳で私が決めたコト〜』では、幸せは常に歌い手の両肩の上に乗っかっています。幸せになれるかどうかはいつも主人公の行動次第です。

生まれたあとは全部私の責任でしょう
だから私はあゆみを幸せにするよ

こんな決意表明をしてこの曲が終わるのは、そんな覚悟が裏にあるからなのでした。
一方で、『やさしい気持ちで』だと幸せの捉え方がかなり大きく違っています。この曲では、幸せは常にだれかとのやり取りの間に生まれています。そして主人公は幸せをもらう側だったのが、幸せをあげられるようになり、最後には幸せが行き交う街全体をイメージしています。

あなたがいて、わたしになる
幸せとはきっと、ひとりきりじゃつかめないもの

とはこういう意味だと思ったのでした。
ふたつの曲は、そういう意味で幸せについて対照的な捉え方をしているのが見えましたね。どちらが優れているとか、本質に近いとか、そういうことはないとは思います。思いますけど、『 事実 〜12歳で私が決めたコト〜』のほうはひりひりする感じ。そして『やさしい気持ちで』のほうが余裕のある感じがしました。皆さんはどう感じましたか?



さて、今回、特にまとめの前の後半はちょっと妄想を膨らましすぎた気もしますが、まあ楽しかったのでよかったです♪ 本当は少しだけ牽強付会の部分もあるんですが、できれば気が付いていても目をつぶっていてくださいませー☆
ではまた。
恋する瞳は美しい/やさしい気持ちで

恋する瞳は美しい/やさしい気持ちで

Box Emotions

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やさしい気持ちで

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